がん検診受けていますか?
- happyhealthlab
- 2024年8月28日
- 読了時間: 4分
日本人の死因で多いものは,厚生労働省の人口動態統計月報年計(2022年)によると,
悪性腫瘍
心疾患
老衰
脳血管疾患
とされています.現在1番多いのは悪性腫瘍ですが,昔は脳血管障害が多かったようです(日本内科学会雑誌).1980年ぐらいから脳血管障害から悪性腫瘍に1位が変わったようですね.

悪性腫瘍で亡くなられる方が一番多いので,多くの方が悪性腫瘍に対しては関心があるのではないかと思います.近親者が悪性腫瘍であるとか,ニュースで有名人が悪性腫瘍で亡くなったりすると,特に心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか.
悪性腫瘍の症状は,こちらの論文によると
正常細胞が腫瘍細胞に則られてしまうので正常な臓器機能がなくなる
腫瘍細胞による免疫学的影響による症状(傍腫瘍症候群)
腫瘍細胞が進展すると悪液質という状態になって衰弱する
などで説明されるかと思います.
2や3は必ず何かしらの症状があると思いますが,1は臓器のどの部分に悪性腫瘍が発生するのか,臓器のどれぐらいの部分が悪性腫瘍で置き換わっているのかによって,症状が出る場合もあるし出ない場合もあります.
悪性腫瘍と診断するためには,
基本は組織を採取して病理学的な検査(顕微鏡で悪性細胞を見つける)が必要
どこの組織を採取するかを決めるために画像検査は必須
なわけです.ここでは触れませんが,この文章を書いている時点においては,腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査では多くの悪性腫瘍は「ある」とも「ない」とも言えません(詳細はハッピーヘルス倶楽部の「健康診断」をご視聴ください).
保険診療において,症状が出ていない段階で全身のCTや内視鏡を実施するのは効率が悪いので,その段階で悪性腫瘍を見つけるのはとても難しくなります.
そうすると,早期に悪性腫瘍を発見するにはがん検診を行うしかなくなります.
でも,本当にがん検診は,患者さんに対して良い結果をもたらしているのでしょうか?
がん検診を考えるときに大切なことは,
「ある時点で悪性腫瘍を発見(診断)した場合に,発見しなかった場合と比べて,患者の寿命が延長するのか?」
という点です.少し難しい内容なので,分かりやすく(それでも分かりにくいと思います.申し訳ありません)例えを考えてみましょう(こちらのHPも参考になるかもしれません)
・60歳のAさんは毎年胃カメラを受けています.昨年(59歳)までは特に問題ありませんでしたが,今年受けたときに早期胃癌を指摘されました.特に胃癌による症状はありません.早期胃癌と分かったので内視鏡的に治療を行いました.早期胃癌でしたので治療によって治り,80歳で亡くなりました.
・62歳のBさんは3年ごとに胃カメラを受けています.3年前(59歳)に最後胃カメラを受けたので,今年胃カメラを受けたところ早期胃癌を指摘されました(実はこっそり60歳のころに胃癌が発生していた設定としましょう.検査をしていないので誰も分かりませんが).症状は特にありません.早期胃癌と分かったので内視鏡的に治療を行いました.早期胃癌でしたので治療によって治り,80歳で亡くなりました.
Aさんは胃癌と診断されてから20年間生存(60歳-80歳)したことになり,Bさんは胃癌と診断されてから18年間生存(62歳-80歳)したことになります.これだけ聞くと毎年がん検診を受けていたAさんの方が「早くに見つかったから,癌と診断されてからより長く生存した」と思いがちです.しかし,同じ80歳で亡くなっていることを考えると,この二人の人生の違いはないわけですよね.これをLead-time biasと呼びます.一見,早く見つかった方がより良いように思いますが,実は一緒ということですね.
また,急に進行して症状が出るようなら一般的な外来診療で発見されますので,がん検診で発見されるのは基本的に無症状の方ということになります.がん検診で見つかる悪性腫瘍の多くは,ゆっくり進行するものですのであまり死ににくいです.となると,がん検診で発見された方(というよりがん検診で発見されるような悪性腫瘍)は長く生存することになります.だからといって「がん検診」が優れているわけではないですよね.単純に,悪性腫瘍の性質の違いです.これをLength-time biasと呼びます.
「健康診断は人々の寿命延長に役立っていない」という衝撃的な話題もありますが,最近はがん検診の有効性を考えるにあたって,死亡率をきちんと減らせているのか?という点において評価されるようになってきていますので,有効性が証明されているものについては定められたタイミングで実施することをお勧めします.


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