大腸癌のスクリーニング
- happyhealthlab
- 2024年12月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年12月15日
本日は大腸癌のお話しです.
日本人は胃癌が多いものと思っていましたが,胃癌よりも大腸癌が今は問題となっているようです(日本対がん協会).
以前よりも胃癌は減ってきているのですが,大腸癌・直腸癌は横ばいという状況のようで(国立がん研究センター),特に75歳以上の方の大腸癌が増えているとのことです(大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン).
大腸癌のスクリーニング方法は
便潜血検査
下部消化管内視鏡検査
S状結腸鏡
全大腸内視鏡
の大きく3種類だと思います.どうも2024年に「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」が発表されていたようですので,そちらを元に記載をします.
<便潜血検査>
検査の簡便さや体への負担がほぼないこと,また便潜血検査による死亡率減少効果もあるとのことで「推奨される」結果となっています.
40-74歳が対象
1-2年ごと
1回法(検査は1検体のみ)でも2回法(検査は2検体を提出)でもよい
ということが明示されたようです.リスクが低い方は,45歳からや50歳からでもよいようです.
<下部消化管内視鏡検査>
大腸は「直腸」と「結腸(S状結腸,下行結腸,横行結腸,上行結腸)」をあわせた呼び方になります.
いわゆる「大腸カメラ」は,大腸全てを観察する全大腸内視鏡検査とS状結腸までを観察するS状結腸内視鏡検査とがあります.
全大腸内視鏡検査は下の図のように,肛門→直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸と進んでいき観察をします.けっこう長丁場ですし,腸も捻れていますので痛みが出る方もいます.

一方,S状結腸鏡は,肛門→直腸→S状結腸と観察して終了ですので負担は少ないようです.
今回のガイドラインでは,
1万人を対象に検査を実施した場合の大腸癌検出数 | 最終的に1例の大腸癌を発見するのに必要な全大腸内視鏡検査数 | |
便潜血検査 | 14 | 20 |
S状結腸鏡検査 | 16 | 17 |
全大腸内視鏡検査 | 11 | 200 |
一番右の列が分かりにくいかもしれませんが,例えば便潜血検査で陽性だった人たちだけを集めて,全大腸内視鏡検査を実施したら,20人の全大腸内視鏡検査をするごとに1人の大腸がんが発見されるという意味です.
ですので,右下の200という数値は,全大腸内視鏡検査で陽性だった人たちを,さらにもう一度全大腸内視鏡検査を実施したという意味ではなく,何のスクリーニングもせずに大腸内視鏡検査を行ったら200人に1人の割合で大腸がんが見つかるという理解だと思います.
このデータを元に,行政として集団に対して実施するにあたっては,
便潜血検査
S状結腸鏡検査
を実施して陽性だった人だけを全大腸内視鏡検査に進んでもらうことが効率的であるとしていますし,個人レベルで自分のリスクを鑑みて「最初から便潜血+全大腸内視鏡検査を実施する」ということも許容されるとしています.
どうしてS状結腸鏡検査でのスクリーニング(上行結腸や横行結腸は観察されません)が有効であるのかいまいち分からないのですが,以前の報告で上行結腸(右側)の大腸がんよりも下行結腸(左側)の大腸がんの方が死亡率が高いというところで,死亡率の高い大腸がんは発見できるから,死亡率の減少に役立つという理論なのかもしれません.
昔は大腸内視鏡検査は10年ごと,と書かれていたと記憶していましたが,今回のガイドラインでは「対策型検診から外れた」わけですので,何年ごとという記載もなくなっておりました.やりたい人がやってもらう検査になったということですし,症状があれば必要に応じて実施してもらう形(それは検診ではなくて診療になると思いますが)になっています.


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