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点滴希望しますか?

みなさんは,体調が悪くなって診療所や病院を受診するときに,「点滴お願いします」と言ったことはあるでしょうか?


日本に限ったことではないかもしれませんが,救急外来や外来診療をしているときに点滴を希望される患者さんは少なからずいらっしゃいます.

その点滴は本当に良いことをしているのでしょうか?


まず人の体は,かなり精密に「恒常性」が保たれています.これは,「なるべく正常範囲内で同じ状態を保つ」能力です.

例えば,前日にラーメンを汁まですすって,塩分と水分が体に溜まったからといって,翌日朝に体がむくんで2kgも体重が増えてるなんてことはないですよね.腎臓が塩分と一緒に水を尿として体の外に排泄してくれています.なるべく体を一定にしようとするわけですね.


逆も同じことで体が脱水になれば,腎臓から尿をなるべく作らないようにして体液の喪失を防ぎます.しかし,体の中の老廃物はきちんと捨てないといけませんので,同じ老廃物を少ない尿の中に混ぜて捨てますので『濃い尿』になるわけです.


次に点滴にどういう成分が入っているか見てみましょう.中東遠総合医療センターで使用しているヴィーンFという商品の点滴をみてみると,以下のようになっています.

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ここに含まれているのは,塩(500mLの輸液に3g)とカリウム(500mLの輸液に0.15g),あとは多少のカルシウムとなります.実は,この輸液には糖分も入っていませんし,ビタミンも入っていません.つまり,単なる『塩水』なわけです.

一方,経口補水液であるOS-1という商品を見てみましょう.

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500mLのOS-1あたり,塩が1.5g,カリウムが0.4gほどとなっています.塩は点滴より少ないですが,カリウムは多めですね.濃さ(濃度)で言うと,ナトリウム(Na)が50mEq/Lと点滴の130mEq/Lより低くなっていますね(要は塩が少ないという意味).


実は,体の中で「血液として」十分に活躍するために,この「塩が一緒に入っている」ことが重要で,夏場に水分だけじゃなくて塩分も一緒に摂りましょう,と言われている理由です.じゃあ,「やっぱり点滴の方がいいじゃないか?!」となりますが,そもそも「誰に投与すべきか?」が大切です.

点滴は,簡単に言うと「単なる塩水」なわけです.その単なる塩水を体に入れて元気になるのは誰でしょうか?そうです「脱水がある患者さんのみ」です.脱水患者さんに点滴をすると血液量が増えるわけですから,必要な栄養素や酸素を体の隅々まで運べるようになりますので体の臓器は楽になりますよね.ボクシングの選手が,減量を終えて最初に口にするのは,ステーキではなく水分ですよね.脱水が進むと実はかなり体調が悪くなります.


では,正常な水量の人に点滴をしたらどうなるでしょうか?単純に血液量が増える(体の水量が増える)わけですから,体は「早く水を出さないと!」と腎臓に指令を出して塩と水を一緒に出します.つまり,尿が増えるわけですよね.

昔こんな実験がされています.動物実験ですがネズミに水分を急速に投与したところ,8分後には「塩と水を腎臓から出せ!」という指令が3-4倍に増えたようです.つまり,体内に過剰な水分が溜まると分〜時間の単位ですぐに尿となって体の外に出されるわけです.

体調が悪いけど水分は摂れていて尿も出ている人が点滴を受けても,1時間後には入った分の塩水は全部尿から出ていくわけです(腎臓が正常である前提).


もしも,体に水が多めに溜まっているとしたらどうでしょうか?過ぎたるは及ばざるがごとし,なんて言いますが,これは次回のお話としましょう.

とにかく点滴は「脱水になっている」「水分が摂取できない」人には効果的ですが,それ以外の人にはあまり効果がないということを知ってください.

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