大人の予防接種
- happyhealthlab
- 4月15日
- 読了時間: 4分
みなさんは子供の頃に予防接種を受けていると思います.
日本では,小児期にワクチンの定期接種が定められています.自分が子供の頃はB型肝炎ワクチンはありませんでしたが,世界標準に従って現在はB型肝炎ワクチンも含まれるようになりました.
こちらのHPを参考にしていただくと,スケジュールなども書かれていますが,この中でVaccine Preventable Disease(VPD)という概念が書かれています.
人類の歴史は感染症との闘いでもあります.最近は新型コロナウイルス感染症もそうですが,昔は天然痘がそうでしたし,麻疹(はしか)や風疹(ふうしん)などの人類にとって重大な病気に対しても予防接種という方法を用いて乗り越えてきました.
人間の免疫は
初めての病原微生物に対しては強力な免疫を動員できない
体が病原微生物を理解して,強力な免疫を動員できるようになると抵抗できるようになる(少し時間がかかる)
強力な免疫が活性化しているうちは,『その病原微生物』に対して強い抵抗力を持つが,時間が空くと免疫が低下していく
一度免疫がついた場合は,時間が空いても完全に免疫がゼロになるわけではなく(メモリーされています),次に『その病原微生物』がやってきたときに,短時間で復活して抵抗できるようになる
とにかく発症させてはいけない病気については,定期的に免疫を活性化させておくことで常に抵抗力を持つことが可能
となっています.
私たちはバイ菌にかからない時間が長くなると,体の中の免疫(抗体)は低下します.
こちらにお示しするのは年齢別に破傷風の抗体をどれぐらい持っているのか,という図になります(参照).

だいたい三種混合ワクチン(現在は五種混合になってました!)に破傷風が入ったのが1968年からということで,10歳ぐらいまで接種続きますので,そこから10-20年ほどは効果が続くことになります.それを過ぎて40歳になるとガクッと低下するのが分かると思います.
現在の日本は衛生状態がかなり良くなりましたので,日常生活に破傷風にさらされることはほとんどありません.そうすると,体に記憶されている免疫自体は「普段から頑張らなくてもいいか」と怠けていくわけです.
アメリカでは,破傷風は大人の定期予防接種として10年ごとに接種勧奨がされていますが,日本では大人の定期接種は存在していません(基本は任意接種で,国が補助をしているものはあります).しかし,土壌に存在している破傷風菌が皮膚を貫いて体内に入ると発症する可能性がありますので,
トゲや貫通した創
銃創
複雑骨折
熱傷
不潔操作による筋肉注射・皮下注射
のリスクがある方は定期的に接種した方がよいと思います.例えば,植物を扱う人(種苗業者など)や動物に引っ掻かれたり咬まれたりする人,あとは消防士や警察・軍隊(自衛隊)の人はリスクが高いことになります.
ちなみに,破傷風の死亡率は軽症だと8%と言われていますが,重症だと50%と言われていますので,絶対に発症させてはいけない病気です.
アメリカのように定期的に接種されていれば問題ないのですが,日本はそういうわけではありませんので,何かの怪我をしたタイミングでお勧めされることが多いと思います.この場合は,今回の怪我における予防というよりも,次回怪我したときの予防になります.
基本的な接種の考え方は,こちらのHPを見ていただくのがよいと思いますが,
今までに3回の接種が実施されていない,あるいは不明な人(十分な免疫がベースとしてついていない):必ず3回の接種を行いましょう
今までに3回の接種が実施されているが,最近10年間は接種していない:1回の追加接種(ブースター)を実施
今までに3回の接種が実施されていて,最近10年以内に接種している:予防接種不要
となっています.
ワクチン忌避の方(場合によっては親がそういう方で,小児期に予防接種を受けられていない方)もいますので,正確には母子手帳を確認していただくのがよいでしょう.
ちなみに,成人で接種していただきたい予防接種は破傷風以外にも
帯状疱疹ワクチン(50歳以上,免疫抑制者)
肺炎球菌ワクチン(50歳以上):65歳以上のニューモバックスが公費補助ありますが,最近は自費のプレベナー20が優秀です
子宮頸癌ワクチン(hPVワクチン)やB型肝炎ワクチンは性交渉のある世代の方で未接種の方はぜひ検討してください.
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