市販の遺伝子検査キットの扱い方
- happyhealthlab
- 1月26日
- 読了時間: 2分
最近,インターネット上でも「遺伝子検査キット」が販売されているのを見かけます.

特定の検査キットに言及はしませんが,
遺伝的な体質の傾向を知って「自分にあったダイエットを始める」
筋肉タイプを知って「自分にあったスポーツを選ぶ」
脂質異常症や高血圧症の発症リスクを解析し「メタボ予防」
といった文言が並んでいますよね.
遺伝子を変更する以外には,遺伝子が規定する病気のリスク自体は変えられません.ハッピーヘルス倶楽部でもお話をしましたが,特に単一遺伝子疾患であれば変えることは難しいです.
一方,複数遺伝子疾患であれば,環境要因も強く影響しますので環境要因を修正する(いわゆる「生活習慣の改善」)ことで,病気の発症リスクを下げることができます.
では,その「行うべき生活習慣の改善」は,特定の一つだけ(例えば食事を改善させるけど,運動はしない)で十分でしょうか?
少しでもリスクを下げるなら,食事も運動も禁煙も睡眠もやるべきでしょう.
そう考えると,遺伝子がどうなっていようと,結局はすでに知られている生活習慣の改善をするだけであると気付きます.
問題は「自分が持っている遺伝子」によって,自分の健康を最適化する方法が決まるのでしょうか?
例えば,遺伝子Aを持っている人は,有酸素運動を毎日60分やる方が,筋トレを15分×週3回やるよりも心筋梗塞の発症が少なかった,なんていう研究はあるのでしょうか?(おそらくないと思います).
治療を考えるときには,必ず「その設定において治療介入された研究がある」ことのみが,効果を担保します.どれだけ「理論上は」ある治療が有効と想定されても,本当に効果があるのかは研究しないと分かりません.
昔,CAST trialという不整脈の研究がありました.
不整脈(期外収縮)に対して抗不整脈薬を使って不整脈を抑えた方が,将来的には健康になる(死亡が減る)と考えて研究を開始しましたが,実際は抗不整脈薬を使った人たちの方が死亡が増えた結果となりました.理論的には良くなるはずが良くならなかったということで,とても教訓的な研究とされています.どれだけ良いと思っても,やってみないと分からないということです.
遺伝子検査キットは,何か背中を押すための一つの方法という点では悪くない方法だと思いますが,その結果の解釈や遺伝子という血縁者に引き継がれる情報の取扱には十分に注意をしていただくとよいかと思います.


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